CLASS EARTH Interview

Nature Positiveへの想いを語っていただきました

2023/05/13

刺繍業界を牽引するタジマ⼯業

⾼品質な刺繍技術の開発⼒、企画⼒で、世界のラグジュアリーブランドの要求に応えてきたタジマ⼯業株式会社さま。
⾼品質を保ちながらもアパレル業界の課題である、⼤量⽣産・⼤量廃棄に対しても向き合い、持続可能な世界へ向けて、業界を牽引し続けています。
またアパレル分野に留まらず、⽷を縫うという技術をベースに、⾃動⾞や福祉⽤具など⼯業⽤にも活⽤し、より良い社会のため新しい技術の研究にも取り組んでいます。

タジマ⼯業株式会社 代表取締役

兒島 成俊

1944年の創業以来、高い技術ときめ細やかなサービスでお客様との信頼を築きあげながら、3,000機種を超える刺繍機を世界130以上の国と地域に送り届ける⽼舗の刺繍機トップメーカー。
世界各地のラグジュアリーブランドの生産にも携わっている。


刺繍業界を牽引するタジマ⼯業の強み

設⽴79年、⽼舗の刺繍機トップメーカーであり、これまで世界のラグジュアリーブランドの⾼度な刺繍品質の要求に応えてこられたかと思いますが、改めて御社の強みを教えていただけますでしょうか。

製品の企画⼒と開発⼒だと思っています。
これは我々の第⼆創業を果たした私の祖⽗が⼤事にしていた考えですが、お客様を直接訪問して、お客様の持つ課題を把握し、解決につなげてきました。ヒアリングした課題に対して、創意⼯夫を凝らして、不可能を可能に変える。
この企画⼒と開発⼒というのがタジマ⼯業の基盤となっている強みだと思っています。

加えて多くのお客様に⻑年ご愛顧いただいているのは、製品の企画⼒・開発⼒に加え、お客様の満⾜や成功への貢献を⼤事にしてきた会社だからであるとも思っています。
というのは、刺繍機は売って終わりではないのですよね。
刺繍機を使っていく中で技術的な難しさに遭遇されるお客様もいらっしゃいます。
例えば、ブランド様が「これをやりたい」とお仕事を依頼してくださったとしても、それを刺繍機で完全に再現できないこともあります。でもそれを諦めることは刺繍ビジネスをするお客様にとっては死活問題となってしまう。
そういった問題をタジマ⼯業が世界に60社以上ある代理店と共に、迅速かつ真⼼をこめて対応することによってお客様の信頼を勝ち得てきたのではないかと思っています。

お客様に気に⼊っていただくものを創りだす企画⼒、それを実現する開発⼒、そして購⼊した後に満⾜し続けていただくサポート⼒が我々の強みだと思っています。

私たちがやりといと思っていることを、何とか実現してくれようとする、寄り添ってくれるお気持ちを打ち合わせの中でいつも感じておりました。「売って終わりではない」とサポート体制を重んじられていることは、とても有難いことです。


刺繍機オペレーションの一工程である上糸のテンション調整の自動化に成功。
刺繍をより⾝近なものへ

AIを搭載した刺繍機i-TMを今回は使⽤させていただきますが、従来の刺繍機との違いや、優れている点を教えてください。

まずは機械刺繍の仕組みから説明させていただきます。
機械刺繍の縫いは針に通した上⽷が⽣地を貫通し、上がる時にできるループに下⽷を絡めて縫いを形成していきます。その時にこの上⽷をどの程度の強さで押さえるかによって、絡みの作られ⽅が変わってきます。制作したい柄に応じて、上⽷の最適な調整を⾏うには経験が必要です。
湿度や温度も影響するので、刺繍機を買って間もない⽅が感覚的にその強さを最適に調整することは難しい。結果、品質にばらつきが出てしまったり、やりたい柄が再現できなかったりということが起こっていました。
⼀⽅で、刺繍のオペレーターは育成に時間がかかりますし、刺繍業界ではオペレーターが不⾜していくことを今後の課題として危機感を持っていました。
タジマ⼯業は刺繍機のリーディングカンパニーとして、この業界の問題を解決しなければならないとの想いがあったので、このAIを搭載した刺繍機「i-TM」を開発しました。
i-TMは、パンチングデータに応じて最適な⽷の量をAIが計算し、機械が⾃動で供給するので上⽷の強さを調整する必要がなく、そのノウハウが要りません
この技術によってより簡単に、品質も安定して⾼いクオリティが出せます。

例えば海外からの技能実習⽣に⽀えられて事業をされている企業さまも多くいらっしゃいます。しかし、技能実習⽣は定期的に⼊れ替わります。つまり入れ替わるごとに数ヶ⽉トレーニングの期間が必要だということになります。
当社のi-TMを導⼊したことによって、トレーニング期間が圧縮されて効率的になり、「⾮常に助かっています」という声をいただいております。

刺繍を導⼊したいけど⼈⼿不⾜等でできないというケースにおいて、企業様の刺繍への敷居が下がったのですね。短期間で習得できるということは、技能習得の場を増やしたい実習生の方にもメリットがありますね。

※AI技術を搭載したi-TM。上⽷を調整するダイヤルがついていない。
⼈の⼿に頼らずとも⾼品質な刺繍を効率的に実現することに成功した。

“1本の⽷を染めながら縫う”
使う分だけを染めるサステイナブルな⾰新的技術

AIを活用し刺繍を効率化、⾝近なものにしていく技術だけでも画期的なのですが、一本の糸を染めながら縫う革新的な技術にはそれ以上にとても驚かされました。

アパレルは⼤量⽣産・⼤量消費が⾮常に問題になっています。
とりわけ刺繍はその華やかな装飾のために多種多様な⽷を使い、その分の⽷を⽤意しなければなりません。ところが⽷を染める⼯程では、汚⽔排⽔の問題もあります。
洋服を⼤量⽣産・⼤量消費することによる環境負荷に加え、必要量以上の⽷を⽣産する際の環境負荷も無視できません。
この技術を使えば、装置内で染⾊した⽷を刺繍機に供給して縫っていくため、糸は一色のみを用意するだけで、多様な色を使った刺繍が可能です。
廃棄、過剰生産を減らすため「⽷は使う分だけ作り、使う分だけ染める」ことを実現した技術です。

刺繍専用染色装置+刺繍機の全体写真。L字部分になっているものが染色装置。
このコンパクトな中で⽷を染⾊し乾かしている。
たくさんの⾊の⽷を在庫する必要がなく、使うのは⽩い⽷のみ。

この唯一無二の技術の話を伺った時に、環境負荷軽減に徹底的にこだわる私たちのブランドで是⾮とも使わせていただきたいと思いました。
この技術はグラデーションをするのに適しているのでしょうか。

おっしゃる通りです。
今まで刺繍機の構造上グラデーションの表現が⾮常に難しかったのですが、染めながら縫うことで、⽐較的容易にグラデーションを表現でき、まさにCLASS EARTH様のテーマにしている「⾃然」を刺繍で表現することができると思います。

デモ刺繍。この綺麗なグラデーションは1本の⽷で縫われている。

持続可能な世界への取り組み

御社のこれからの発展の中で持続可能な世界に向けて⼤切にされている想いを教えていただけますでしょうか。

雇⽤の創出や福祉介護への刺繍の転⽤など、様々取り組んでいます。
刺繍技術を応⽤展開して、電気を通す⽷を縫い付けたセンサー付き介護⽤品に活⽤するなど、社会貢献を⽬指し、先端技術チームを置いて⽇々研究しています。
後継者としての使命という点では、会社を百年後⼆百年後も存続させるために、事業、活動、組織を作っていくのはもちろん、社会に必要とされ、存在を認められ続けなければならないと考えています。
そういった意味で地球が今抱えている社会課題、社会要請に対して最⼤限答えていきたいと思っています。

グローバルで展開されている御社だからこそ、影響⼒が出せる社会課題はありますでしょうか。

我々のこの刺繍機を活⽤すれば、⼤量⽣産・⼤量消費による環境問題について、⼀歩解決に貢献できると思っております。
今までは労働⼒の安いアジアを中⼼に⼤量⽣産されていましたが、徐々に先進国へ⽣産回帰しようという流れがみられるようになりました。
それは昨今、サプライチェーンが分断されているという政治的な背景もありますが、⼀⽅で「⼤量⽣産・⼤量消費をいつまで続けるのか」という問いに対する判断でもあると思います。
我々のグローバルなネットワークを⽣かし、ブランド様が品質を落とすことなく、消費地の近くでの⽣産に回帰し、⼤量⽣産・⼤量消費を減らしていけるように願っています。


世界の刺繍機トップメーカーが考える業界の未来について

海外で展開されてきて、刺繍のマーケットがもっと広がりそうだと思われる国はありますか。

インドなどは刺繍が盛んだと言われています。
そのような刺繍の文化がある国の生産工場が、機械化のメリットを効果的に取り込めれば、もっと⼤きなビジネスへ発展する可能性があるかもしれません。

その国の得意分野で雇⽤を創出することは重要ですよね。
インドは⼦どもが世界⼀多くいる国ですが、⼗分な教育を受けている⽐率が低いと⾔われています。適切な雇⽤を増やすことは、子どもたちが教育を受けられる環境を増やすことにも繋がっていますし、大変有意義なことだなと思いました。

おっしゃる通り、多くの価値を貢献できる可能性があると思います。
⼀⽅で、現状のインドも含め、多くの国で刺繍が需要ほど⾏き届いてないのではと感じています。というのも、「刺繍ができる⼈」と「刺繍を欲しい⼈」がちゃんと繋がってないなと感じる節が多々あるからです。
この問題の背景には、刺繍機の扱いの難しさや受発注する時の煩雑さなどがあるものの、すでに我々の技術を以て改善できる問題であると思っています。
中⻑期的には、刺繍の裾野を更に広げつつも、技術課題の解決にしっかりと時間をかけて取り組んでいきたいと考えています。


CLASS EARTHの印象

最後にCLASS EARTHの印象を教えていただけますでしょうか。

持続可能な地球のために、これほど深く考え・実現に向けて取り組んでいらっしゃるブランドは、類まれであってはいけないのですが、実際のところ現時点ではまだ稀有な存在だと思います。
持続可能な社会を実現するためには、「教育」により地球を護る⼈を育て、社会を構築すること、
「技術」によって社会改題を解決し、命の尊さを護ること、何より⼼豊かな未来を創造する「⽂化」を育み、それを継承することが必要だと考えています。
CLASS EARTH様の「教育」「⽂化」への熱意・推進⼒と、タジマグループが創業以来培った「技術」
「⽂化」が共鳴し、現在の⽣産・消費の在り⽅を変え、地球を護る社会につながっていく。
今回のパートナーシップがその⼀助になればと願っています。

CLASS EARTHモチーフのデモ刺繍。
美しい刺繍をするためには、刺繍機に指⽰を出す為の刺繍の元となるパンチングデータが重要となる。
これもタジマ⼯業が誇る技術⼒の⾼さである。

タジマ工業株式会社
https://www.tajima.com/jp/

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教育 自然保護

Project WILD日本代表コーディネーター、一般財団法人 公園財団 開発研究部 環境教育推進室 室長

川原 洋氏