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2023/10/30

30by30目標に向けて。OECMと自然共生サイトの違いとは

2021年にG7サミットで、Nature Positive(ネイチャーポジティブ)と共に国際的な約束となった「30by30(サーティー・バイ・サーティ)」は、2030年までに陸と海のそれぞれ30%を自然保護として保全対象にする目標です。

国立公園などはProtected Area(PA)として、強い強制力を持って自然環境の保全を行える一方で拡大が難しく、30%の達成が困難であるという問題があります。
そこで、国立公園のように法的に設定される保護地域以外で、環境保全や生物多様性の維持に貢献している地域をOECM(Other Effective area-based Conservation Measures)として認定し、保全・観測していこうという取り組みが始まっています。

他国の達成状況は、唯一ドイツが陸も海もPAだけで30%を超えています*1
イギリス、フランスなどはPAで海域は達成しているなど、各国の状況は当然異なりますが、行政が管理するエリアでOECMを拡大していく方針の国が多いようです。

では日本の達成状況はどうなっているでしょうか。


実態として、2021年の調査では陸は20.5%、海は13.3%しか保全区域として認められておらず、国立公園など国の管理区域のみでは圧倒的に足りていないことが判っています。国土の30%を国が保全することは、日本の場合容易ではありません。

*1 30 by 30目標と世界の状況
一般財団法人 日本経済研究所
企業×地域戦略としてのOECM の可能性調査~自然共生サイトの活用とその課題~


日本で始まる「自然共生サイト」とは

そこで日本は、自治体や企業が保有・管理する里地里山や森林・緑地・公園・社寺林・ビオトープなどをOECMに含めて行く「自然共生サイト」という取り組みが始まっています。
30by30のサイトで募集が行われていますので、そちらもご参考ください。

30by30|環境省
https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/

自然共生サイトとは、「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定する区域のことです。いわば民間の保護区のようなものとなります。
土地の保有者が申請し、環境省による審査を通ると、保護地域と重複された区域以外がOECMにも登録が進められます。
つまり、「自然共生サイト」はOECMを増やすための取り組みです。
自然共生サイトとして認定されるメリットは、保有する企業や団体が生物多様性への取り組みを明示化することで、投資家や一般消費者、利用者にPRでき、企業価値の向上が見込めるといった、現状ではいわゆるブランド力の強化がメインとなっています。
しかし、今後に向けて経済的インセンティブの是非なども検討*2されています。

自然共生サイトに認定される可能性のあるエリア例
企業の森、ナショナルトラスト、バードサンクチュアリ、ビオトープ、自然観察の森、里地里山、森林施業地、水源の森、社寺林、文化的・歴史的な価値を有する地域、企業敷地内の緑地、屋敷林、緑道、都市内の緑地、風致保全の樹林、都市内の公園、ゴルフ場、スキー場、研究機関の森林、環境教育に活用されている森林、防災・減災目的の森林、遊水池、河川敷、水源涵養や炭素固定・吸収目的の森林、建物の屋上、試験・訓練のための草原…など

*2
30by30 に係る経済的インセンティブ等に関する検討状況<環境省>
https://www.env.go.jp/nature/30by30_00001.html


私たちひとりひとりが参加できる30by30

他国ではOECMは国の取り組みとして進められており、民間や自治体が積極介入する状態にはなっていません。
一方、「自然共生サイト」の概念を取り入れた日本は、国も地域も団体も企業もみんなで協力して国土の30%を保全していこうという方針を打ち出したということになります。

国任せではなく私たち一人一人が取り組みに参加でき、国際的な自然環境の保全のメンバーになれると思うと、ワクワクしてきませんか?
Nature Positiveは、数値化し辛く分かりにくいだけに、パートナーシップで回復させていくしかない。だとしたら、様々なステークホルダーが協調できる自然共生サイトの考え方は理にかなっていると思います。

日本は世界36箇所しかない生物多様性のホットスポット。重要な自然、生き物が日本列島に点在しています。多くの人の力で守り続けていかなければなりません。

CLASS EARTH株式会社は、OECM・自然共生サイト拡大に貢献すべく「生物多様性のための30by30アライアンス」に参加しています。

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