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SDGsやNature Positiveに関するトピックなどをお届け

2024/09/05

生徒発信で推進するNature Positive -福島大学附属中学校のビオトープ作り-

制服プロジェクト:Nature Positive 通信

CLASS EARTH 制服を導入いただいた学校の活動を紹介する「Nature positive通信」。今回は福島大学附属中学校の、ビオトープの取り組みについてご紹介します。
福島大学附属中学校では、生徒が主体となったビオトープ作りを中心として、生物多様性の学びに力を入れられており、日本生態系協会が主催する、全国学校・園庭ビオトープコンクール2023では、文部科学大臣賞を受賞するなど、校内や地域だけにとどまらず、全国的にも評価される取り組みを行っています。
今回は、そんなビオトープ管理委員会の皆さんにお話しを伺いました。

全国学校・園庭ビオトープコンクール2023で、文部科学大臣賞を受賞したときの様子

ビオトープの始まり きっかけは「生き物が好きだった」

ビオトープに取り組み始めたきっかけを教えてください

ビオトープを作ることになったのは、理科の授業で生き物に関して学ぶ中で「本物の生き物を観察し、学びを深めたい」と生徒たちから意見が上がったことがきっかけです。
これを受け、中庭に様々な生き物が観察できる環境を作り、またせっかく作るのであれば「全国学校・園庭ビオトープコンクール」に応募するのはどうかという意見が上がりました。生徒たちの発案を先生方に職員会議で承認いただき、プロジェクトが始まりました。

2024年6月 取材時の中庭ビオトープ

まずは、全校生徒に興味・関心をもってもらえるように「校内ビオトーププランコンテスト」を開催し、全校生徒に「どんなビオトープが作りたいか」というアンケートを実施しました。

集まった案の中から最終審査を行い、1位に選ばれたのが、現在の福島県の形を模したビオトープのデザインです。このデザインは、昨年度卒業した先輩の提案によるものです。

この案をもとに、実際に自分たちで土を掘り、ビオトープを作り上げました。学生と先生方をあわせて20〜30人で作り始め、2023年に完成しました。
今ではビオトープ管理委員を設けて、全学年あわせて約30人で日々管理を行っています。

2023年 作っている時の様子
完成したビオトープ。福島県の形をしている

福島大学の先生方との連携

ビオトープ作りには専門的な知識が必要な為、福島大学の先生方とも連携しています。 福島大学の植物分類学を専門としている黒沢教授を講師としてお招きし、ビオトープという概念について講義をしていただいた他、環境整備のため「ヨシ」や「ススキ」などをビオトープに移植しました。

しかし、ヨシは水生植物なので、去年の夏休み中に干上がってしまい現在定着してない状況です。ススキはどこでも定着しやすいので、今ではかなり数が増えています。

また、生き物の専門家である福島大学共生システム理工学類の塘教授をお招きして、このビオトープを作ってから、中庭ビオトープと外庭の両方の生き物の数がどう変化したかを調査しています。

ビオトープを作る際にどんなことを調べましたか?

学校だけでなく周辺の地形を調べました。
黒沢教授の授業でも、失われた自然を復元していこうということで、附属中の位置を数十年前の地図で調べてみました。すると元々草地だったことがわかり、それを復元しようと思い、「ヨシ」や「チガタ」などを移植しました。

この土地は元々緑生い茂るような場所だったので、そこに水が入ることにより、その草地を好む生き物や、水を好むアメンボなど水生物も来るようなりました。


目標は「生物多様性をこのビオトープ空間で実感できるようにすること」

現在はどんな生き物が多く見られますか。

水を飲みに来るような鳥や、アメンボ、トンボが多くみられます。
トンボは赤とんぼやシオカラトンボなどが多く、オニヤンマは2回飛んできました。
去年はツマグロヒョウモンという蝶も多かったです。
今年は夜カエルの声も聞こえてくるので、カエルも水のお陰で来たのではないかと推測しています。

このビオトープが完成した際に植物は移植しましたが、生き物は何も入れていないので全て自然発生です。

また、福島市の鳥はシジュウカラなのですが、今までやってきたことがありません。
近くに「小鳥の森」という森があり、そこに福島市の鳥であるシジュウカラを含め、様々な鳥が生息しています。ここはその森からとても近いので、このビオトープにも多様な鳥が来てくれたらいいなと思っています。


計画、実行、観察、改善。「水が抜けてしまう」課題に向き合う。

去年は、トンボが産卵しているところが発見されたのですが、夏休み中に干上がってしまったのが原因で、卵が死んでしまい観察できませんでした。

夏休み中に干上がってしまったビオトープ

水を溜めておく工夫として、去年はコンクリートで下を埋めてはどうかとか、土を入れ替えてはどうかという意見があがったのですが、トンボがちょうどこの期間中に産卵しているのを発見したんです。その為、掘り返したらせっかく産んだトンボの卵がなくなってしまったり、無理やり環境を変えたらよくないのではないかと考え、取りやめることにしました。

今年は、トンボが産卵する前に何かしらの工夫をして水を溜めておくことを考えています。今年こそトンボが産卵をして、そのヤゴを観察したいです。

また、水が蒸発することは仕方がないのですが、下に染み込んでしまという課題がどうしても解決できていません。
今、解決方法として考えていることは、田んぼの土と比べて、どちらの方が水を保つことができるのかを検証し、ここに田んぼの土を引くか引かないかを決めてようと思っています。

その他にも、そもそも水自体が溜まらなかったので、去年作られたこのダムに水を留め、それをホースでいつでも出せるようにしました。今年は継続的に水が供給できるようにできればと思っています


降水量に着目し新たな取り組みを開始

夏休み中に、干上がってから数ヶ月後、台風が発生し福島市も豪雨に見舞われました。
翌日、学校に来てみると、干からびていたビオトープに水が溜まっていたんです。この出来事をきっかけに、降水量に注目するのが重要なのではないかと気が付きました。

大雨によりビオトープ内の池が満水に

そこで、関本先生に協力を得て、雨量計を設置する今の活動に至っています。

降水量の関わりを調べていく中で、現在は蒸発量についても調査しています。
今後、観測した結果と福島の気象データの降水量を比較し、本校の降水量が正しいかどうか、そこから予測できることは何かを年間の観測を通じて明らかにしていく予定です。

その結果、降水量が少ない時期に対策できることを新たに発見することができると考えています。


田んぼやビオトープを学校全体で学びに活かせる場所にしたい

ビオトープだけでなく、稲の学習も広めていきたいと考えられているのですよね。

はい、この田んぼにある稲は、譲り受けたことをきっかけに、稲を好む生き物を呼び込むことができるのではないかと考え育て始めました。
例えば稲の根は「ひげ根」で、葉脈は「平行脈」なので単子葉類の学習に結び付きます。

また、ビオトープはただ管理委員で管理するだけではなく、生き物の学習にも活かしています。例えば、1年生は身近な環境の生き物について調べているのですが、図鑑を作りたいと話が上がったので、この附属中学校にいるビオトープに来た生き物をまとめています。

また、福島の地域にはどんな生き物がいるか調べたいという話もあったので、実際に福島市小鳥の森から講師の方をお呼びして講演会を開く予定です。


“生き物が好き”をきかっけに環境に興味を持つ生徒たち

どういうきっかけでビオトープに興味を持ったのですか?

元々環境に興味はありませんでしたが、生き物が好きでした。
この活動を通して環境にも興味を持つようになりました。

多くの生徒達が環境に興味を持つきっかけはどんなところにあると思いますか?

田んぼやビオトープがあることで、生徒たちの自然に対する関心が高まったように感じます。校内ビオトープコンテストのときは本当に沢山の応募があったので、ビオトープから自然や環境に興味をもった人は多いと思います。

授業でも生物多様性の回復について習いますか?

はい、主に理科・総合的な学習の時間で昔の地形と比べながら学んでいます。
理科は自然復元ということで様々なことに関連して勉強しています。


環境保全の取り組みが地域にも広がることを願って。
「ふくしまビオトープ子どもサミット」の実施

昨年は、県内の小・中学生を対象に「ふくしまビオトープ子どもサミット」を開催しました。このサミットは、県内にビオトープを普及させたいという一人の提案から始まり、Zoomを利用して各校の取り組みや本校の活動を共有し、意見交流の場を設けました。

その結果、会津若松にある第四中学校でビオトープを作る計画が立ち上がりました。
この活動を通じて、ビオトープの広がりを感じ嬉しく思っています。

福島大学附属中学校 ビオトープ管理委員会の皆さま、ありがとうございました。
ビオトープは人間が作れる生態系の第一歩とも言われ、まさにこれが第一歩となり、生徒の皆さんの学習が広がっていると感じました。
これからの活動も楽しみに注目しています!


CLASS EARTHの制服プロジェクトを採用した福島大学附属中学校の新制服について

令和7年度の新入生から採用となる新制服は、コンセプトである「知的」、「伝統的」、「上品」、「気品」「凛々しい」といったイメージに沿うデザインにするため、フォーマル性の高いスーツスタイルを採用しました。

ジャケット、スラックス、スカートの生地にはピンヘッドという立体感がある生地を使っています。

校章のモチーフになっている「紫蘭」の花の紫色を織りまぜた本校オリジナルのものです。

この生地は環境配慮素材で、洗濯時に発生するマイクロプラスチック(海洋汚染の原因の1つ)を抑えることができます。 スカート・スラックス、ネクタイ・リボンは生徒の選択制とし、生徒の自主性を尊重しています。

ユニフォームプロジェクト

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